AGCTについて

世代も背景もが異なる仲間が集い、
静岡の魅力を伝えるためにどうアプローチしていけばいいか?
「地域資源を有効に使おう」
「お酒に加工すれば世界中の人に届けることができる」
「蒸留所をつくって新しいものを生み出そう」
話しに花を咲かせ、"駿府"静岡市のテロワール(地域特性)を
感じられる唯一無二の商品を造ることになりました。

テロワールを活かすには、
その土壌に育つ植物の特性を明らかにすることと、
その環境に合った品種改良が大切なキーワードになります。

品種改良することや新しい特性を見出すことなど、
すべての現象はゲノムDNAの情報を明らかにすることにつながります。
その発想をヒントに、
ゲノムDNAを表す4つの塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)と
会社名を掛け合わせて、Aoi Gin Craft Technologyを立ち上げました。

静岡大学発のベンチャー企業として設立したAGCTは、
科学的根拠を基に静岡市を国内外に幅広くPRしていきます。
Aoi Gin Craft Technology株式会社 (AGCT) の
「過去」「現在」「未来」
について紹介させて頂きます。
私たちの活動に是非興味を持っていただければと思います。

 

静岡県静岡市の有東木(うとうぎ)という山間の地で
山葵農家として働いている望月裕可 (もちづきゆうか) と申します。
AGCTでは主に広報を担当していますが、
今回の商品は私の背景から生まれましたので、紹介させてください。

現在はご縁があり、地元のテレビ局である
静岡第一テレビの「まるごと」という情報番組でコメンテーターとしても活動しています。

 

今から約400年前、有東木で日本初の山葵栽培が始められたと言われていることをご存じでしょうか。
地域ではこのあたりを「わさび山」と呼びます。 1607年、駿府城に入城した徳川家康に献上し、
その珍味を称賛され天下の一品として村から門外不出の御法度品とされました。
有東木の村は静岡のマチュピチュともうたわれ、
標高500メートルほどの山の中腹に60数戸の世帯が暮らしています。
山葵作りだけでなく盆踊りや神楽などの伝統行事も、
地域が一体となって守って来た、歴史のある美しい場所です。

私はここ有東木で代々山葵農家を営む両親のもとに、
三人兄妹の末っ子として生まれました。小さなころからずっと、
父と母は山葵の仕事で休む暇もなく忙しく働いていたため、
家族でお出かけをした思い出はほとんどありません。
休日には山葵田に一緒に行って手伝いをしたり、
家の横にある作業場で両親の働く姿を見ながら、
兄姉と遊んだりしていました。
派手さのない日々ではありましたが、
ひたむきに誠実に山葵と向き合う父や母の背中は、
いつも私たち兄妹に生き方を語りかけてくれていた、と今になって思います。

山梨の大学を卒業し、静岡に戻り就職。
その後結婚し二人の子を授かりましたが離婚してシングルマザーとなりました。
まさか自分の人生にそんなことが起こるとは思いもよらず、
悲しさと不安で押しつぶされそうになった時もありましたが、
これからの自分はどうやって生きていきたいのかを真剣に考えたとき、
選択したのが山葵農家として働くことでした。

父に
「楽じゃない、きれいではいられない仕事だけど大丈夫か?」
と聞かれたことを今でも覚えています。
ですが私は自分が生まれ育った大好きな有東木で
地域活性化の為にできることを探したかったし、
これからどんどん年を取っていく両親の力になりたかった。
そして何より、自分が選んだ道でいきいきと働く母親の姿を
子供たちに見せたいと強く思いました。
一番上の兄がすでに就農をし、
家族のリーダーとして農園の運営を引っ張ってくれていましたが、
私も女性として違う角度から山葵業界、
農業に貢献できることが絶対あると考え、6年前に就農しました。

働き始めてからは、力仕事などにおいてなかなか男性と同等には
動けないなと感じることがあります。
父や兄の培ってきた農業のスキルや知識には
到底追いつけないと焦る気持ちもあります。
そんな中でも、女性ならではの視点を活かした考えや活動を通じて、
別の方法で輝ける方法はたくさんある、と手ごたえも感じられています。
最近のSDGsの理念にも強い関心があります。
山葵の活用しきれていない部分も無駄にせずに、
新しい価値のあるものへと利用できないかと日々考えていました。

そんな中、今回のプロジェクトは、
静岡駅前で約16年もBARを営んでいるバーコードさんから始まりました。
姉の友人であり、偶然にも望月という姓をお持ちのバーテンダー望月聖也さんに、
日本で生産されているクラフトジンを勧められ、口にした時
「これは!!」
という感覚が湧きました。
おいしかったのはもちろんのこと、様々な風味があることに驚き、興味を持ちました。

お茶やスパイス、木材など自由に原材料を決めて、
風味や味を仕上げているGINは、多くの面で山葵とぴったりでした。
山葵は和食から洋食まで幅広い食事にさわやかなアクセントを添える存在です。
そのさわやかな風味が、食事のお供となるお酒にやさしく香ったら素敵なんじゃないか、
それも活かし切れていない葉や茎を活用して!
また、GINはお酒としての定義が厳しくないことで、
山葵だけでなく他の農産物など、
静岡の良さを盛り込んで地域の特色豊かなものにできるとも考えました。

しかも国内から海外への輸出も盛んで、
静岡の良さを日本国内だけでなく世界中にアピールできるチャンスがあると感じました。
聖也さんとダブル望月で話が盛り上がり、
当農園の山葵を使ったものや他の農産物での試作品を何度も作っていくなかで、
「これは本当においしい、たくさんの方に飲んでほしい!」
と思う気持ちが強まっていきました。
しかし、前に進むには超えないといけない壁がありました。
蒸留やお酒造りといった、経験や勘に頼る部分が必要なお仕事は、
「修行」という一定期間を経なければ、
満足のいく製品が造れないのではないかという漠然とした不安です。

バーテンダーの聖也さんと二人で議論している時、
お仕事でお世話になったことのある、
静岡大学農学部植物機能生理学研究室の一家崇志准教授のことを思い出しました。
一家先生は作物の品質と栽培環境との関係性について研究されており、
様々な化学成分の分析にも長けています。
そのため、数字で見えるお酒造りができれば、
科学的な視点から商品の特性を最大限引き出すことができ、
効率よく品質の安定したモノづくりができるのではないかと考えました。

さらに、科学的根拠をもって風味や味を数値化して表現することで、
消費者の方にもわかりやすく私たちの商品を楽しんでいただけると思いました。
このような経緯で一家先生とダブル望月のプロジェクトチームがスタートしました。
そして、一家先生がこれまでの研究で培った経験と人脈から数名のメンバーが加わり、
静岡大学発ベンチャー企業‟Aoi Gin Craft Technology”の発足へと、
トントン拍子に事が進んでいきました。

 

バーテンダーの望月聖也さんの静岡高校時代からの御友人である
浮月楼代表取締役の久保田耕平さんも、
空前のハイボールブームの中、本当はハイボールと和食は合わないのではないか…と
日々、和食と合うお酒の可能性を模索してらっしゃいました。
私たちの造る山葵GINは和食と洋食の懸け橋になることを目指しています。
AGCTでは久保田さんに「四季折々の和食とそれに合うお酒(GIN)のマリアージュ」を
探求していただきます。そしてもう一つ大事なこと。
料理とのマリアージュの探求をより深めるべく、
蒸留所名を「浮月蒸留所」と「浮月蒸留所 離れ」と名付ける事としました。
浮月楼は、徳川慶喜公のゆかりの地ですが、
徳川家康公は有東木の山葵を門外不出とするほど、お気に入りだったとか。
こんな繋がりのある浮月楼との協力体制は、
国内外の方をはじめ、インバウンド需要にも訴求しやすいと考えています。

こうして発足したAGCT 浮月蒸留所は、まず以下の活動に着手します。
① 静岡中部(静岡市)初のクラフトジンの生産と販売(まずは山葵のお酒)
② 静岡市内の魅力有る原材料を少量OEM生産受注する事による市内の魅力発信
③ 静岡大学の知識や技術をあつめた、農産学連携の分析とものづくりへの反映
④ 静岡市内の農家、飲食店の盛り上げ
⑤ 蒸留所「浮月蒸留所」と「浮月蒸留所 離れ」のオープン